パーツの組付けから合わせ目消しまで何かと役に立つ瞬間接着剤ですが、あらゆる接着剤の中で最も寿命が短く劣化しやすい接着剤です。
今回はそんな瞬間接着剤にフォーカスを当て、劣化の原理と見分け方、劣化を防ぐ対策を紹介したいと思います。
瞬間接着剤硬化のメカニズム
瞬間接着剤の成分表を見るとわかりますが、中身のほとんどがシアノアクリレートとうもので構成されています。
シアノアクリレートは空気中や接着面の水分と瞬間的に反応して強力に硬化、接着する性質を持ちます。
瞬間接着剤が硬化する前に接着面を触ってしまい「熱い!」と思ったことはありませんか?これはシアノアクリレートが水分と結合して硬化する際に起きる熱反応なのです。
よくモデラーは瞬間接着剤の乾燥~と言ってしまいますが(僕もよく言うw)、本当は乾燥ではなく化学反応による「硬化」という表現が正しいです。
まぁ乾燥で十分伝わるけどね
瞬間接着剤劣化の一番の原因は水分
硬化の原理が分かった方ならピンときたかもしれませんが、瞬間接着剤が劣化する最大の原因は”水分”です。
シアノアクリレートは流した瞬間に固まるくらい水分に敏感に反応してしまう成分なので、瞬間接着剤を袋から取り出し、使っている間、キャップをしない間、保管している間に微小な水分にどんどん反応して劣化していきます。
瞬間接着剤が劣化するとどうなる?
劣化しやすいといえども、毎日のように瞬間接着剤を使っていないとその違いは分かりにくいかもしれません。
瞬間接着剤が劣化するとどうなるかというと…
粘度が上がる
新品時にサラサラだった瞬間接着剤が劣化すると徐々にネバネバになってきます。
水分を含んで起きた硬化反応により生乾き状態になっているというとイメージが伝わりやすいでしょうか?
低粘度タイプの瞬間接着剤は新品だとサラサラすぎるので、この劣化はモデラーによっては逆に使いやすいと歓迎する人もいますが(笑)、サラサラな接着剤ほどこの変化が顕著などで異変に気付く人は多いと思います。
頻繁に瞬間接着剤を使う方は、中身を出した瞬間に劣化に気づくかもしれませんね。
硬化時間が伸びる
瞬間接着剤が劣化すると硬化時間が長くなります。
新品時はそれこそ瞬間で硬化していたものが、劣化すると10秒ほどかかってしまうこともあります。
セットタイム(固定時間)が長くなるのでこの特性変化を好むモデラーもたまにいますが、劣化した瞬間接着剤は硬化強度があまり高くなく後述する白化などのリスクもあるのであまり良いものではありません。
硬化促進剤を吹いてもすぐに硬化しなくなる
瞬間接着剤を便利にする硬化促進剤ですが、劣化した瞬間接着剤は硬化促進剤を吹き付けても新品時のように一瞬で硬化しなくなります。
この現象が特に顕著に表れるのが黒い瞬間接着剤や瞬間カラーパテといった超高粘土タイプの瞬間接着剤で、劣化したカラーパテで合わせ目を消そうとしても中々硬化せずヤスリ掛けができないなんてことも多いです。
硬化時に白化現象が起きやすくなる
瞬間接着剤の硬化トラブルにつきものの白化現象ですが、これは硬化反応中に含んだ水分が残ったまま硬化が完了してしまい、接着剤内部の水分が白く曇ってしまうことで起きる現象です。
劣化した瞬間接着剤は硬化反応が遅くなるので接着剤中に水分が含みやすくなり、白化現象が起きやすくなります。
新品の接着剤では白化しなかったのに使い古しの接着剤だと白化してしまう…なんて経験はありませんか?ある方は潔く新品の接着剤に交換しましょう。
硬化促進剤を使えば白化をある程度抑えられますが、塗装したパーツの組み込みには使えませんから、あやしいと思ったら接着剤を新品に変えましょう。
塗装の比じゃないくらい湿度にシビアな瞬間接着剤
実は瞬間接着剤のコンデイション維持はとても難しくシビアなのです!
雨だと塗装はしないのに…
「雨だから塗装はやめよう」と言っているモデラーさんのtweetは良く見かけますが、雨だから瞬間接着剤は使わないでおこうと言うモデラーさんは見たことがないです(笑)
しかし個人的に瞬間接着剤は塗装以上に湿度コンディションに注意を払っておくべきだと思います。
吸湿が瞬間接着剤を劣化させる最大の要因なので、湿度の高くなる梅雨や夏場は特に気を付けてください。
開封してからオイシイ期間は2週間~1ヶ月
瞬間接着剤が開封時のコンディションを保てる期間は開封から2週間~1ヶ月といったところです。(経験談)
瞬間接着剤メーカーの推奨も未開封の常温保存で1年、開封後は1ヶ月としているところが多いので、この経験談は間違っていないと思います。
劣化のスピードは瞬間接着剤の容量が少なくても大きくても大差がないので、ついコスパの高そうな大容器(20mLなど)入り接着剤を買ってしまって使い切ることなくダメにした経験は誰しもあるかと思います(笑)
みんな20ml入りの瞬着を使い切ったことなんてないでしょ?だってあれ工業(大量使用)用だもの。
僕のおすすめは大容量の瞬間接着剤を買うより、小さい小分けのものを頻繁に買うことです。
瞬間接着剤が劣化したな…と感じ始めたら、その瞬間接着剤は合わせ目消しや傷埋めなどに使い、組み立て用は新品の瞬間接着剤をおろして使うのが模型的にもコスパ的にも優しいです。
瞬間接着剤の劣化を遅らせる方法
ここからは瞬間接着剤を少しでも延命させる方法を紹介します。
使い終えたノズルは外してキャップを必ず締めよう
使った瞬間接着剤は必ずキャップをして保管しましょう。キャップをすることで吸湿を防ぐことができます。
昔瞬間接着剤のノズルをケチってつけっぱなしで保管していることが多かったですが傷むのが早かったです。
ノズルを使った場合はそのノズルは差しっぱなしにせず、毎回捨てたほうが瞬間接着剤は長持ちします。
だってノズルも高いし…2本くらしか付属しないし…
ノズルは大量に入った交換品が売られていますので、そっちを買ったほうが瞬間接着剤をダメにするよりかは低コストです。バンバン取り換えましょう(笑)
また使用前にキャップに付属している押しピンで開けるタイプの瞬間接着剤もありますが、使用後はその押しピンを差しなおすよりかは元あったキャップを使うほうが長持ちするようです。押しピンは何度も刺すとガバガバになって吸湿しやすくなるためでしょうか…?
最近は付属している押しピンの反対側が栓形状のキャップになっているものもありますね。
使用後はすぐに付属のパウチに入れよう
瞬間接着剤はパウチに入れられて売られていますが、あれは重要な保存袋なので捨てずにとっておきましょう。
中にはパウチ内の乾燥状態を保つシリカゲルが入っていますので、それを一緒に保管しておくと吸湿による劣化を遅らせることができます。
作業中はついつい机の上に置いておきたくなりますが、ちょっとでも劣化を遅らせたい場合は使用後すぐにパウチに戻すと安心です。
保管は冷蔵庫か冷凍庫がベスト!
瞬間接着剤は温度が高いほど硬化が促進しますので冷やしておく方が長持ちします。
そのため使用後の保管は温度の低い冷蔵庫がベストです。冷蔵庫は温度も低いですが湿度も低いので実は瞬間接着剤の保管に最も適している、どんなご家庭ほぼ100%ある保管庫なのです。
ちなみにさらに温度も湿度も低い冷凍庫に保存すればより劣化を防ぐことができますが、瞬間接着剤は温度が低すぎると硬化速度が遅くなるので、使用前はしばらく外に出して常温に戻すようにしてください。
僕は冷凍庫保存は常温に戻す際に結露発生などの心配もあるので基本的に冷蔵庫派です。
冷蔵庫に瞬間接着剤を入れるって意外と浸透していないらしく、「家族に怒られるわ」と言っている方を見たことがあります。僕の実家では親父が常時瞬間接着剤を保管していたのでなんの違和感もないんですけど、そんなウチはマイノリティだったなんて…(笑)
瞬間接着剤を正しく保管して快適モデリング
まとめます!
- 吸湿による硬化反応の促進が原因
- 粘度が上がる(トロッとしてくる)
- 硬化時間が伸びる
- 硬化促進剤を拭いてもすぐに硬化しなくなる
- 硬化時に白化現象が起きやすくなる
- 使い終えたノズルは外してキャップを必ず締める
- 使用後はすぐに付属のパウチに入れる
- 保管は冷蔵庫か冷凍庫に入れる
湿度の高くなる梅雨から夏の間は特に瞬間接着剤が傷みやすいです。
正しく管理してあげれば開封後でも半年くらいは持たせられますので、大事に管理してあげてください!
おすすめの瞬間接着剤
劣化してもバンバン新品に交換できる小分け入りなのに、お値段は1本あたり100均くらいの額に収まり、さらに100均の瞬間接着剤とは一線を画すクオリティを持つ瞬間接着剤がWAVEの瞬間接着剤シリーズです。
サラサラで硬化時間の速い低粘速硬タイプと高強度タイプの2種類を抑えておけばほとんどの模型製作で困りませんのでぜひ導入してみてください。
模型用おすすめ接着剤まとめ記事もあるよ
これを読めばあなたも模型用接着剤マスター!