ガンプラやゾイド、美少女プラモデルといった接着剤不要のプラモデルは、スナップフィットというパーツの片側にピン、パーツのもう片側にダボという構造で部品をはめ込んで組み立てられるようになっています。はめ込んだパーツは中々外れません。
大変便利なスナップフィットですが、ガンプラを改造したり塗装して組み立てる場合は、全体のバランスチェックやパーツの合いの確認、部位ごとに工作や塗装を加えられるようにするためにも、スナップフィットのパーツをばらせるように組み立てる必要があります。
このパーツの確認から分解できるようにするまでの作業を「仮組み」というのですが、今回はスナップフィットを簡単ばらせるように加工する方法を解説したいと思います。
仮組みをマスターしてプラモデルを改造しまくろう!
仮組み方法1:ピンカット
最初に紹介する方法はピン(出っ張り)側を斜めにカットして短くすることで分解可能にする仮組み方法です。
昔からスナップフィットの仮組みと言えばこれ
やり方を見てみましょう!
ピンカットのやり方
とは言っても作業は簡単でピンの先を30~45°くらいの角度でニッパーを使ってカットするだけ。
ピンを斜めにカットしても全長はあまり短くしないほうがバラけにくくて良いです
カットができました。角度のイメージ伝わりますか?
これでスナップフィットをハメて組み立てても簡単に分解することができます。
改造や塗装が終わり、もうバラすことがなくなったらダボ穴に接着剤を塗布してがっちり固定してしまいます。
太いピンでも仮組みできます
ダボ穴径が3mmくらいのものになると、上の写真のようにヒケ防止のために穴があいた一見ダボに見えるピンも出てきます。
ここも同じように斜めカットすればOK。
一発でカットできなくても何回かに分けて斜めにすれば大丈夫ですよ。
カット完了。これで安心して仮組みができますね。
カットする前に合わせる部品同士を確かめてダボなのかピンなのかを確認してから作業しましょう。
ピンカットのメリット、デメリット
- 簡単でお手軽かつ時間もかからない
- プラモデルのメーカーや時代にあまり影響されない
- 最近のピンをモールドに見せるキットでは施工できない
- カットしたピンで机がゴミだらけになる
ピンカットのメリットは販売されているスナップフィット式プラモデルならメーカーや販売時期問わずほぼどんなものにでも工作可能なところ。
昔のコトブキヤやボークスなどの中国生産キットでみられる六角形のダボ穴や、ピン先端にバリがでてキノコの傘状になっているプラモデルでも工作可能です。
反面、最近のRGやMGのガンプラの装甲裏などでよく見られる組んだ後にピンが見える部分には工作ができません。
カットしたピンが丸見えになりますからね(笑)
こういう部分は後述するダボさらいで対応しましょう。
ピンカットのおすすめ工具
普通のニッパーで問題ありませんが、ピンは狭い部分にあったりするので刃先の細い模型用を使いましょう。
おすすめはタミヤの薄刃ニッパーです。
このニッパーは頑丈かつ先が細いので模型の仮組みから改造までなんでもこなせますよ。
記事の写真ではアルティメットニッパーを使っていますが、アルティメットニッパーは刃先がそれほど強くないので、慣れていない方はやめておいたほうが良いです(笑)
仮組み方法2:ダボさらい
続いてのダボさらいはダボ穴を工具で少し大きく広げることにより、ハメあいを緩めて分解できるようにする仮組みする方法です。
慎重派におすすめ!
この方法はピンの形を変えないため、先ほどの説明したような「組み立てた後に見えてしまうピン」の部分にも工作が可能です。
やり方を見てみましょう!
ダボさらいのやり方
こちらが皆さんご存知のダボ穴です。こちらを工具で広げるだけ。
使うのはこちらのピンバイス用のドリル。
ガンプラ(というかバンダイキット全般)の場合上記の1.0mmから3.0mmまで0.5mmピッチで揃えてあればほぼ問題ありませんので、タミヤのドリル刃セットなどを買っておけばOKです。
Amazonなどで売られている格安ドリルは切れ味が悪いのでおすすめしません。
この前試しに買ってみたら穴を開けられないドリルが混入しておりエライ目に合いました…。
ガンプラの場合直近15年以内くらいのキットであれば、どのダボ穴も上記のドリル径よりわずかに小さい径で設計されているので、ぴったり入りそうなドリルで穴を軽くさらってあげれば絶妙なユルさに調整することができます。
掘りすぎるとゆるゆるになってしまうのでドリルを回す回数は2~3回くらい、掘る深さは相手のピンの長さの1/2くらいから始めて、ハメあいを確認しながら進めましょう。
1キットほど仮組みしたら何も考えずにいい感じに調整できるようになります(笑)
ゆるゆるすぎたら最後の組み立てで接着しましょう
3mmなど太くて長いピンの場合はドリルをわずかにナナメに当てながら広げるといい感じに仕上がります。
上の写真で僕はドリルを手持ちしていますが、わざわざピンバイスに挟む必要もありません。むしろ手持ちくらいの力の入らなさのほうが仮組みに適しています。
これで仮組みが完了!
ダボさらいのメリット、デメリット
- パーツの見た目が変わらないのでどんな部品にも工作できる
- 慣れればハメあいの具合などを微調整できる
- 古いガンプラやバンダイ以外のキットではドリルの径が合わないダボがあり工作できない
- すべてのダボを掘るのは地味に面倒。
やはり一番のメリットはどんなダボに施工しても見た目が変わらないところと微調整の容易さです。
反面、ハメあいのキツイ昔のキットだとドリルで掘ってもはめ込みがきつかったりするので微調整が難しい他、コトブキヤやボークスなどのバンダイ以外のメーカー(特に中国製金型)の場合、ダボ穴が妙なサイズでドリルが対応しない場合があるのがデメリットです。
多少ドリルサイズが合っていなくてもドリルを斜めに入れてぐりぐりすれば工作は可能ですが、大量にあるダボすべてにその加工をするのは少し時間もかかってしまいますね。
最近は見えるダボが多いので、僕は基本的にこっちのダボさらいで仮組みしています
仮組み方法その3:平たいピンの場合
最近のガンプラやMGのキットでよく見られる丸いピンではなくベロ状の平たいピンも取り外せるようにできます。
やり方を見てみましょう!
平ピンの仮組みのやり方
平ピンの場合先ほどの斜めカットは効果が薄く角ダボはドリルで掘れないので、ピンを薄くして仮組みします。
デザインナイフや超硬スクレーパーなどの工具をカンナのように動かしてピンを薄く工作するだけ。
ピン先端に向かうほど細くなるように工作するのがコツです。
ハメあいの確認を慎重に行い工作完了!
平ピンはクリアーパーツでよく見られますが、この工作はクリアーパーツでも行えるのでこれでバッチリ。
平ピン処理のオススメ工具
デザインナイフでも行える本加工ですが、僕のおすすめは断然超硬スクレーパーです。
超硬スクレーパーはパーツのカンナがけやパーティングラインの処理に役立つ切削ツールです。
ナイフに比べて切れ味が良く刃先がなまくらになりにくいのがポイント。
一本持っておくと便利なツールです。
このツールはピンバイスに差し込んで使うのですが、僕のおすすめは上記写真真ん中の三菱鉛筆ユニホルダー。
2.0mmシャープペンシルなのですが、ドリルやチゼルといった刃物工具をクランプすることもでき、持ち心地は普通のシャーペンそのものなので重いピンバイスに比べて格段に作業性が上がります。
仮組み工作の隠れたメリット
仮組み工作は分解ができるようになるのが最大のメリットですが、副次的な効果で塗装やスミ入れをしてもパーツが割れにくくなるというメリットがあります。
我々が普段何気なくはめ込んでいるスナップフィットはダボ側を押し広げる強い負荷により目に見えないヒビが入っており、そこにエナメル溶剤などの浸透性が高いシンナーが付着すると、ヒビにシンナーが浸透してパーツ割れを起こしてしまいます。
仮組みでダボを大きくするなどしておくことでパーツに負荷やヒビが入らないようにしておけば、スミ入れや塗装を行ってもパーツ割れが起きにくくなります。
これは特に2000年代前半に多かったABSパーツを採用したガンプラや、FAガールなど美少女プラモなどに効果的です。
仮組みをマスターしてナイスプラモを作りまくりましょう~!