美しく研がれたカウル、作り込まれたディティール、実車を彷彿とさせる塗装、バイク模型には見所がたくさん。
その中でも一番見てしまうしプラモデルの完成度が最も左右されるといえるのがマフラーです。
マフラーというものは材質と使われるシチュエーション、パイプの曲げ方や形状である程度焼け方にセオリーがあるものなので、正しく塗られた模型は非常にリアルに見えますし、そうでないものは作品を見てもおやっ?となってしまうものです。
多くのモデラーさんが色々と試行錯誤して塗っていらっしゃると思いますが、実際は中々難しい…ということで今回は僕が行っているマフラーの塗装方法をご紹介。
ちなみに今回は市販車のチタンマフラーの塗装方法です!
ちなみに僕が塗ったものはこのような仕上がりになります。
これはタミヤのCBR1000RR-Rというプラモデルのマフラーを塗装したものです。
GoogleでCBR1000RR-R マフラーなどど検索すればこのカットと同じ構図で写真を撮られているライダーさんのサイトがあるので見比べてみてください。
結構遜色ない仕上がりになっていると思います。
ちなみにこのキットの製作記はこちら
では早速塗装の解説に入っていきましょう。
塗装前の準備
マフラーは大体どのプラモも各気筒から出るエキパイ部と集合部(触媒など)で部品が分割されていますが、塗装前にすべてのパーツを接着して組み立てておきましょう。
組んでしまうと塗装できない部分が出たり焼け色が他の部分にのったりするのでは…と心配になられるかもしれませんが、意外と塗れてしまうのでご安心を。
ちなみにこのエキパイは各部の継ぎ目に走る溶接ビードを伸ばしランナーで再現したりと少々のディティールアップを加えています。その作業を解説した記事はこちらです。
今回はこの溶接ビードをしっかり生かした塗装をしていますが、ビードを付けなくても同じ塗り方で同様の仕上げ感に塗装するこは可能です。
下地作り
マフラーはメタリックカラーをふんだんに使うので下地をしっかり作っておきましょう。
- 下地:ガイア サーフェイサーエヴォ(グレー)
下地チェックをして問題がなけれな光沢黒で下地色を塗装します。
- 下地色:ガイア Exブラック
この段階で塗装時にツブやダマができていたらラプロスやシンナー風呂で塗装を剥がしサフからやり直してください。
最後にチタン色で本体色を塗装して準備完了。
- 塗装色:クレオス スーパーチタン
マフラー塗装の基本色にメッキシルバーやプレミアムミラークロームといったメッキ風塗料を推奨されるモデラーさんが多いですが、これら塗料は塗膜が非常に弱く今回のように汚したりマスキングしたりする場合には適しません。
クレオスのスーパーチタンやタミヤのスパークリングシルバーは普通のラッカー塗料なのにメッキカラーに近い色合いで塗膜が強いのでおすすめです。
それでは焼け塗装に入っていきます。
エキパイの塗装
色々と手順がありますのでじっくりトライしてみてください!
失敗したらMr.カラーうすめ液で洗って塗装を剥がせばやり直せます。
溶接ビード焼けの塗装
最初に溶接ビードの色を全体に塗装します。
- 塗装色:ガイア セミグロスブラック(ごく少量)+ガイア クリアーパープル
- トップコート:クレオス スーパースムースクリアー
上の写真のExブラックは使っていません(なぜか一緒に撮ってしまった)
チタンの溶接ビードは青黒く焼け少し輝きがあり、乗り込まれるとどんどん青黒くなっていきます。
ここは下地のシルバーの上に少量のブラックを混ぜたパープルを吹きつけてあげれば、乗り込まれて青黒く焼けた感じが再現できます。
上の写真では伸ばしランナーで作った溶接ビード付近を重点的に塗装していますが、この色は全体に吹き付けてしまって構いません。(ただし下地のメタリックを完全に覆うほど塗りつぶさないようにしてください)
塗装ができたらスーパースムースクリアーでつや消しコートをします。
溶接焼けにはツヤがありませんからね
スーパースムースクリアーのマットな質感は溶接焼けなどにもぴったりです。
溶接ビードのマスキング
溶接ビード色を塗ったため全体的に真っ黒になってしまいましたので再度チタンシルバーを塗装しますが、その前に溶接ビードの色は残したいのでマスキングをおこないます。
マスキングといえばマスキングテープですが、ここでは両面テープを使っています。
使って見て頂ければわかりますがこのような微妙な位置調整が必要なマスキングは、両面テープを使うほうがコロコロ動かして微妙な位置決めができるので作業がやりやすいです。
さらに両面テープでマスクすると境目に塗料が染み込みガタガタになるためよりリアルな溶接感が出ます。
両面テープは幅1.0~1.5mm程度でカットし、指でよじって太さ1mm程度に細くして使いましょう。
両面テープは普段の模型製作でお使いのものでOKです
エキパイ色の再塗装
再びエキパイ本体の色を塗装します。
- 下地色:Exブラック
- 塗装色:クレオス スーパーチタン
溶接色が黒いのでそのままスーパーチタンを塗っても良いですが、僕はシルバー色をしっかりと発色させたいので一度全体をExブラックで塗りなおしてからスーパーチタンを塗装しています。
スーパーチタンを塗る際はマスキング部に塗料を吹き付けすぎないようにしましょう。
塗料をマスキング部に吹き付けすぎるとテープ内に塗料が回り込んで溶接色が細くなったり消えたりしてしまうのでご注意を。
かといって吹き付けが甘いとエキパイの色がまだらになるので注意
このあたりは何度か練習してコツをつかんで下さい。
次の工程からお楽しみの焼け色をつけに入っていきましょう。
焼け色の塗装
ここからが腕の見せ所。実車の資料を確認しながらじっくり塗装していきましょう。
焼け色を付けるためのクリアーカラーの塗装は細吹きが前提のためエアブラシの設定がシビアです。
僕は大体こんな設定で塗っていますよ。
- 圧力:0.04~0.05Mpa
- 絞り:2mm程度の太さで吹けるくらい
- 希釈:塗料:シンナー = 1:1程度
クリアーカラーは希釈しすぎると水っぽくなりすぎミルククラウン(飛び散り)の原因になるので希釈はしすぎないほうが良いですが、濃すぎるとダマになり焼け色っぽくもならないので必ず試し吹きをして調整してください。
どうしても飛び散ってしまう方はExクリアーなどのクリアーコート塗料を混ぜると吹き付けやすくなりますよ。
クリアーブルーの塗装
まずはチタン焼けといえばこの色、クリアーブルーからです。
- 青焼け:ガイア クリアーブルー
青く焼ける場所はエキパイに強い熱がかかる場所です。
代表的な個所でいうと高温の排気熱にさらされるエンジンから最も近いエキパイのカーブ部や継ぎ目の部分になります。
実車資料を見るとCBR1000RR-Rのエキパイは上の写真のようにエンジンから一つ目の継ぎ目付近が最も青く焼けるようなのでその通りに塗ってみました。
エンジンに接続されているエキパイがあまり青く焼けない理由は、他の部分より厚肉で焼け色が出にくいからかもしれませんね。
なんてことを想像しながら塗るとより楽しい(笑)
クリアーカラーは塗った直後と乾燥後で色味が変わる(濃くなる)傾向があるので、少しづつ塗っては乾燥させ様子を見ていきましょう。
調子に乗って塗りすぎると真っ青になってしまいますので要注意。
もし塗りすぎてしまった場合は再度シルバーを吹き付けることでやり直すことができます。
クリアーパープルの塗装
- 紫焼け:ガイア クリアーパープル
先ほど塗った青焼けのマフラー出口側や触媒付近などにクリアーパープルを塗装します。
チタンエキパイは高温側から低温側に向かってブルー→パープル→レッド→オレンジと焼けていきます。
クリアーレッドの塗装
先ほどのクリアーパープルの境目付近にクリアーレッドを吹き付けます。
- 赤焼け:ガイア クリアーレッド
クリアーレッドはちょっと塗るだけでも一気に雰囲気が変わってしまい、場合によっては台無しになってしまうことがあるので少しづつ様子見して塗り重ねてください。
実車資料を確認したところマフラーの触媒付近もうっすら青焼けと赤焼けが見られるので塗装を加えておきました。
この段階ですでにちょっといい雰囲気ですね
クリアーオレンジの塗装
ここで一気にエキパイらしい質感になっていきます。
- 全体の焼け色:クリアーオレンジ
チタンマフラーは乗り込むほど全体がオレンジ色に焼けていきますが、オレンジの焼けは溶接部の周辺やマフラーの径が細くなるテール側でより濃くなるのでそういうところを中心に塗装します。
クリアーオレンジも塗った直後と乾燥後で色味が変わるので少しづつ塗りましょう。
ネットで資料を集めていると公道メインで乗られている実車オーナーさんの車体と海外レビューサイトなどサーキット場でガンガン回している車体とでは焼け方が全く異なっていることが分かります(後者の方が色が濃く焼ける)。
そのためエキパイを塗装する際は多くの資料を参考にせずに同一車体のもののみを参考にしたほうが失敗しにくいです。
また、このCBRの場合サイレンサーの手前でエキパイが二股に分かれるのですが、奥側の細いパイプの方が手前の太い側より濃く焼けるとのことです。
これは二股に分かれる直前にある可変排気バルブ機構の作動時間が太い方と細いほうで異なるらしく、細い方により多くの排熱が通過するためだそうです(SNSで実車オーナーの方に教えてもらいました)。
ということで奥側にクリアーオレンジを多めに吹き付け「よく焼き」にしてあります。(写真では分かりにくいですが)
先ほどの写真で二股のエキパイ部にマスキングを施していましたが、実車ではその部分にパイプを継いでいる溶接が走っています。
溶接がされるということは厚肉になり焼けにくいので、溶接ラインに沿ってマスキングをしてからクリアーオレンジを塗り、上記のような見た目に仕上げておきました。
とにかく資料をよく見るべし
クリアーオレンジは溶接部周辺などを重点的に塗った後、全体にふんわりと吹き付けて色味を整えると良いですよ。
ブラックコート
ここが自己流!
焼け色のついたマフラーはリアルですが実物と見比べるとどうにも色味が軽い印象…そこでブラックを吹いて色味をワントーン落としてグッとリアルに仕上げてみましょう。
- Exブラックを5倍希釈程度でシャバシャバにしてコート
Exブラックはそのまま塗ると元の色が消えてしまうのでシャバシャバにして薄くコートします。
少しづつ重ねてあげると金属光沢の深みが増し、鮮やかに付きすぎた焼け色が落ち着いてきて乗り込まれた実車のように仕上がっていきます。
ガイアノーツからはクリアーブラックという塗料も出ていますが、クリアーブラックは少々吹いたくらいでは全然黒味が出ず塗装が大変なので、シャバシャバに希釈した普通のブラックがおすすめです。
つや消しコート
- クレオス スーパースムースクリアー(少し薄めに希釈)
メタリックカラーは塗りっぱなしの人も多いですが、焼けたマフラーというものは基本的につや消し(そもそもチタン材そのものにキラキラと輝くような光沢はありません)なのでつや消しコートしておきます。
かなりリアルな見た目になってきました。
スーパースムースクリアーは普段より溶剤を多めにして少し光沢感のあるつや消しにしておくとさらにグッド。
可変排気バルブユニットの塗装
この塗装はCBRでしか行わない箇所なのですが…せっかくなので。
- 塗装色:タミヤ ラッカー フラットアルミ + ガイア クリアーブラウン
実車資料を参考にそれらしい色を作って塗装するだけです。
これにて塗装完了ですが、まだ両面テープマスキングは剥がしちゃだめですよ。
ウェザリングと仕上げ
僕の製作スタイルは乗り込まれたリアル感を重視するのでマフラーは積極的に汚します。
ウォッシング
下の写真はマスキングを剥がした”アフター”の状態ですが、この作業はマスキングを剥がす前に行います。
タミヤのスミ入れ塗料をマフラー全体に塗りつけウォッシングします。
金属色に深みが出つつ、エナメル塗料特有の光沢感が金属らしさをアップさせてくれます。
さらに両面テープマスキングの上からウォッシュすることでテープの境目に黒が入り、テープを剥がした際に溶接部と金属色の境目がよりくっきりします。
ウェザリングマスターによる汚し
ウェザリングマスターDの青焼けをクリアーブルー塗装部に、ウェザリングマスターDの赤焼けをクリアーパープル~レッド部にかけて塗布します。
一度塗料で焼け色を付けているもののウェザリングマスターで付けられる色は塗料とはまた違う質感なのでこの作業はやったほうがリアルに仕上げられます。
さらにウェザリングマスターBのススをエキパイのエンジン側などに擦り付けより濃くしておきます。
高回転付近を常用するスーパースポーツはエンジン側がどんどん青黒く焼けていきます。
チタンマフラー焼けと言えば鮮やかなブルーを想像する方が多いですが、あれは意図的に外側から排熱以上の高温で焼いて色を付けてあるのです。
そのような見せマフラーと違い、レース機材のチタンマフラーはサーキットなどで常に様々な温度域にさらされているのでキレイに焼けないんですね。
エキパイの塗装完了!
色々な作業を重ねましたがこれにて完成です。
溶接ビードの質感もどうでしょう?
なかなかリアルだと思いませんか?
ちなみのこの焼け色、Twitterで元HRCの方(バイク乗りYoutuber&ブロガーのANDYさん)に褒めてもらいました!
キットに合わせるとこんな感じです!
う~む…控えめに言って最高。
ではここで作業のまとめを。
- 溶接マスキングには両面テープ
- クリアーカラーは希釈しすぎず少しづつ吹き付ける
- 質感アップにシャバシャバブラックコート
- 焼けたマフラーにツヤはない
- ウォッシングでさらにリアルに
- ウェザリングマスターは塗装では出せない質感が出せる
- リアルに仕上げたければ何よりも実車資料!
以上のようなことを考えながら作業をしてみてください!
サイレンサーも塗装してマフラー完成
サイレンサーも実車通りに塗り分けて…
組み付けた姿がこちら。
リアルにマフラーが塗れると抜群に完成度がアップしますね!
このマフラーを取り付けている記事は下記を参考にしてくださいね。
今回のHowtoを利用したキットの製作記はこちら
解説に使用したマフラーを組み込む製作記はこちらです。
製作レビュー記事一覧はこちら
こちらはそのキットのアクセス用まとめ記事になります。